うつ病で休職したときの効果的な過ごし方

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うつ病で休職したときの効果的な過ごし方
うつ病
この記事は約23分で読めます。

私は20代の後半くらいのとき、適応障害と診断されて1ヶ月間休職しました。
しかし休み中に過ごし方を間違えてしまった結果、かえって症状が悪化し、やがてうつ病になってしまったという苦い思い出があります。

うつ病や適応障害に対する理解が足りないまま、医者や職場に言われるがまま休職してしまうと、どんなふうに休みを過ごして良いのかわからずに不安になってしまうことがあります。
そんな不安を払拭するために無理をして、その結果体調を崩したり、最悪は病状を悪化させてしまうわけです。

今回はそんな「うつ病あるある」を避けるためにも、うつ病経験者として「休職期間中の効果的な過ごし方」について、考え方や必要な準備、具体的な例などを紹介したいと思います。

なお、これはあくまでも私の体験に基づく解説なので、誰に対しても有効であるとは限りません。
またこの記事で紹介する内容は典型的なうつ病(メランコリー型)が対象で、いわゆる「新型うつ病」と呼ばれるタイプに関しては想定していない点に注意してください(私は素人なので、自分が体験したタイプのうつ病のことしか分からないのです)。

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休職に対する心構え

「休職に対する心構え」というと、少し仰々しく感じてしまうかもしれません。
けれども過去の私のように、何も考えないまま休み始めてしまうと、どうしても「こんなことをして良いの?」「もっと早く治るようなことをすべきでは?」といったことを考えて、ムダに不安になったり焦ったりしてしまいます。

休職中は、どうしても不安や焦りを感じてしまうものですが、だからといって不安や焦りを放置して良い訳ではありません。
それらを少しでも減らすことで、より安心して休むことができるようになります。
当然、心穏やかに過ごした方が治りも早くなるため、心構えが重要になるのです。

休職は決して「サボり」じゃない

まず理解して欲しいことは、「休み=サボり」ではないことです。

ときどき、そのことを理解しようとしてくれず、一方的に「サボりだ」と決め付けたり、疑ったりしてくる人に遭遇することがありますが、なるべく気にしないようにしてください(まともに相手にすると疲れたり、悲しい思いをしてしまうので、できる限りスルーしましょう)。

うつ病に対して、漠然と「心の病気」であるというイメージを持っている人は多いのではないかと思いますが、実際は脳の機能障害によって発生する心と身体が不調になる病気です。
仕事や職場でのストレスなどによって脳がダメージを受けてしまった結果、神経伝達物質の分泌異常によって感情が暴走したり、逆に感情が表れなくなったりする、といった具合です。

休職する目的を理解する

うつ病になった際に休職を伴う長期間の休みが必要になる理由は「脳の機能を回復させるためです。
これが休む目的になります。

このように目的をハッキリさせることによって、どのように過ごせば良いかがわかりやすくなり、行動の良し悪しについても判断がつきやすくなります。
ですので、目的は忘れずに覚えておくようにしてください

もし休み中、実行すべきか迷うことがあった時には、「脳機能を回復させる」という目的に反していないかに注目して考えてみましょう。
ストレスや負荷が多く掛かり、かえって病状を悪化させる危険がある行動は、目的に反するのでやるべきではありません。

もしそれでも判断が難しいことがあった場合には、医師に相談するようにしましょう。

休職期間は多めにとる

休職をするにあたって、医師や会社と相談をして休職期間を決めることになるかと思います。
そのとき可能であれば、少し長めに期間を設定してもらうことをオススメします。

うつ病は風邪や骨折などと違い、回復に必要な時間を予想するのが難しい病気です。
現に私の場合、当初は1ヶ月で治ると診断されていましたが、休職中に病状が悪化したために、半年間まで期間を延長することになりました。
このように、休職期間を変更しなければならないことは普通に起こりえるのです。

休職をするにも延長するにも、会社側のルールに従った手続きが必要です。
しかしうつ病真っ盛りの人にとっては、たとえ簡単な手続きだったとしても大きな負担になる可能性があります。
そもそもサインをしに会社に行くことが困難な状態かもしれませんし、最悪は会社に向かうことで病状が悪化してしまう、という可能性だってあるのです。

そのようなリスクや手間を最小限に抑えるためにも、あらかじめ余裕を持った期間を設定するようにお願いしてみてください。

急性期での心構え

うつ病発症後に治療を開始して、ある程度状態が落ち着くまでの期間を「急性期」と呼びます。
多くの場合、休み始めの数週間~1ヶ月程度が急性期にあたるでしょう。

抗うつ薬は患者の様子を見ながら、少量から徐々に増やしていくのが一般的で、必要量が処方されるまでに2週間~1ヶ月程度かかることもあります

また抗うつ薬の多くは服用してから効果が表れるまでに、1~2週間程度の時間が必要となっています。

さらに抗うつ薬には相性があるので、良い薬にめぐり合うまで何種類も試すことになる可能性もあります

このように、うつ病は「治療を開始すればすぐに楽になる」タイプの病気ではありません。
ですので休み始めてから薬の効果が現れるまでは、絶対安静面会謝絶くらいの気持ちでいるのが良いでしょう。
この時期は体を動かすことさえ大変な場合もあるので、できる限り負荷を受けないように、徹底して楽に過ごすようにしてください。

回復期での心構え

薬が効いて状態が落ち着き、徐々に症状が良くなっていく期間を「回復期」と呼びます。

回復期になると、少しずつやる気が出てきたり、集中力が戻ってきたりしますが、一定の周期で調子が良い日と悪い日を繰り返すことになります。
この周期を繰り返すことで、少しずつ調子の良さが大きくなっていき、回復に近づきます。

調子の波を表す画像
調子の波を繰り返すことで、少しずつ調子が良くなる。

急性期に比べて症状がだいぶ落ち着いてくるため、調子の良い日であれば、例えば15分くらい本を読めるようになっていたり、30分程度ゲームを楽しめるようになっていたりなど、多少の活動が可能になってきます。

この頃に良くあるのが「治ったと勘違いする」「復職を焦る」「通院をやめてしまう」といったことです。
状態が良くなったとはいえ、残念ながらまだまだ回復したとはいえません
この時期は様子を見つつ、慎重に活動量を増やして行きましょう。

また回復期は一進一退を繰り返しながら徐々に回復に向かうため、ちっとも治らないという印象を抱いてしまったり、「このまま治らないかも……」と不安を感じてしまいやすい時期でもあります。
ここで焦って無理をしたり、通院や服薬をやめてしまうことのないように気を付けてください

復職間近での心構え

回復期を順調に過ごすことで、やがて調子の揺れも少なくなり、更に安定した状態に落ち着いて行きます。
医師の判断にもよりますが、基本はこのような状態になってから復職を検討すべきです。

長期間自宅で療養しているため、かなり体力が落ちているはずです。
少しずつ様子を見ながら、適度な運動によって体力を取り戻しつつ、医師と相談して復職に向けたトレーニングを行いましょう(オススメは散歩です)。

なお、通院と服薬はまだまだ必要です。
良くなったからといって、勝手にやめないようにしてください。
薬の飲み忘れに注意です。

復職直後の心構え

無事に復職できた後も、通院服薬は当面継続することになります。
復職できたからといって安心せず、慎重に様子を見ながら作業量や作業時間の調整をしましょう。
上司や同僚の理解と協力が必要不可欠なので、しっかりとコミュニケーションしてください。

ちなみに私は、復職に成功したことがありません(たぶん10回くらい失敗しました)。
長期間休んだ負い目もあり、ついつい周りの楽観に従って無理してしまったり、自分を過信したりして作業量を増やしてしまい、再発させてしまっていました。
そういった点にも注意して、しっかりと体調管理をするように気をつけましょう。

休職する前に確認しておきたいこと

休職をすることで、基本的にはうつ病の治療に専念することができます。
しかし会社としては、そのまま社員を放置するわけにはいかないので、定期的に連絡を取ることを義務付けていたりします。
もしそのルールを知らないまま休職に入ってしまうと、突然会社から連絡が来て驚いてしまったりなど、不都合が起こるかもしれません(特に急性期は気をつけるべきです)。

また休職をすると、大抵は収入がなくなります。
十分な蓄えがある人は良いですが、そうでない人はお金の問題で悩んだり、心配してしまうかもしれません。

そのような心配をぜずに安心して休むために、休職前に確認しておいてほしいことを紹介します。

有給休暇が使えるか

一般的に、休職期間は給料がもらえません。
そのため休職に入る前に、まずは有給休暇を消化して、わずかでも負担を減らしたいところです。

私の場合、当時勤めていた会社のほうから有給消化を提案されましたが、必ずしも会社側から提案してくれるとは限りません
特にそういった話が出てこないようなら、自分から有給消化についての相談をしてみてください。

傷病手当や自立支援医療の申請手続きについて

うつ病で休職をしようとする際、会社から「傷病手当金」の受給について説明があると思います。
傷病手当は健康保険の制度で、申請することで給料の2/3が支給されます。

また長期間の通院が必要な場合は、医療費の負担額が減る自立支援医療(精神通院医療)」が利用できます。
こちらについては会社から案内されることは少ないと思いますが、傷病手当とあわせて利用することで、経済的な負担をかなり減らすことができます。

これらの制度を利用する場合は、休む前にあらかじめ申請書類を貰っておくなどして、ある程度準備しておくと良いでしょう。

詳しくはこちら ↓ で説明しています。

休職に関する会社の決まり

休職は会社が定める制度です。
従って、会社ごとに細かいルールや適用条件が違っていたりします。
多くの会社は休職前に一通り説明をしてくれるとは思いますが、万が一の場合はこちらから人事担当者や上司にルールを確認するか、休職に関する就業規則を確認しておくと良いでしょう。

以下は、特に確認しておきたい内容です。

  • 休職期間に関する決まり(最大でどのくらいまで休めるのか)
  • 休職中の給料に関する決まり(休職中は給料の一部を支給する、などの決まりがないか)
  • 社会保険料や税金の支払いに関する決まり(支払いの方法について)
  • 休職中の連絡に関する決まり(連絡内容や頻度、手段などについて)
  • 復職時の手続きに関する決まり(何となくで良いので、確認だけ)

オススメの過ごし方

ここからは、効果的な休職期間の過ごし方について紹介しようと思います。

なお、紹介する内容については私個人の体験に基づくものがほとんどなので、その点に注意してください(心配な場合は、医師に是非を確認してください)。

急性期編

まずは急性期でのオススメの過ごし方を紹介します。

急性期での心構えでも書きましたが、急性期はできるだけ心身に負担を掛けず、休むことに集中するのがオススメです。

寝たいだけ寝る

急性期は、もっとも症状が重い時期でもあります。
症状にもよりますが、私の場合は体がダル過ぎて、起き上がるのも歩くのも大変でした。
また抗うつ薬などの服用も始めたばかりで、まだ効き目が十分に現れていないかも知れません。
このような時は、絶対安静面会謝絶がオススメです。

とにかく休養を最優先にしてください。
その結果、生活リズムが崩れてしまっても仕方がありません。
家族や同居人がいる場合は、可能な限り理解を得た上で、寝たいだけ寝ていましょう
眠らずに、ただベッドや布団に横になっているだけの時間も含めます。
つらいなら無理に起き上がる必要はありませんし、何なら1日中横になって過ごしたって構いません。

うつ病の急性期は、それまで無理をしてきた分の疲れが、一斉に心身に降りかかっているような状態で、もはやまともに活動するエネルギーすら残っていません。
その状態を回復するためにも、睡眠だけでなく、ゴロゴロするという意味も含めた「寝る」という行為は、必要不可欠なものなのです。

寝てばかりいることに対して罪悪感を覚えてしまう人が多いかとは思いますが、ここは何とかして「病気だから仕方ない」と割り切って、とにかくグータラしてください。

食べたいときに食べる

食事はなるべくしっかり取ったほうが良いですが、食欲が落ちている場合もありますので、無理に朝昼晩キッチリ食べる必要はありません
睡眠に合わせて、起きたときに好きなものを軽く食べる、といった具合でも大丈夫です。

「時間通りに食べなければ」と考えると、どんなに状態が悪くても時間通りに動かなければならなくなります。
急性期ではトイレに行くだけでも苦労することが多いので、そもそも時間通りに食事を用意して食べるということ自体が困難です。

また人によっては一時的に味覚が変わってしまっていたり、なくなってしまっていて美味しさを感じられなくなっている場合があります。
そんな状態では食事を楽しむことができませんし、積極的に取ろうという気持ちが薄れるのも当然です。

そういう意味でも、必要最低限を取れれば十分なのです。
寝るのと同じく仕方ないと割り切って、「とりあえず適当でいいや」くらいの気持ちで考えると良いでしょう。

ちなみに私は枕元にバナナを置いておいて、腹が減ったら1本食べる、といったやり方をした経験があります(ゴミの処理ができなかったので、結果的にすぐ止めましたが)。

泣きたくなったら思い切り泣く

急性期には、無性に悲しくなって泣きたくなる時が多々あります。
そういうときは我慢せず、思い切り泣くようにしましょう

一時期「泣いてストレス発散する」という「涙活」が流行った気がしますが、実際に涙を流して泣くことには、ストレス発散効果があることが科学的に証明されています。
なので泣きたくなったら、遠慮せずに感情を爆発させて号泣してしまいましょう。
びっくりするほどスッキリするので、だまされたと思って1度泣いてみてください。
念のためですが、嘘泣きでは効果がありませんので注意です。

「泣きたくても泣けない」という人は、これを機会に泣けるように練習してみるのも良いかもしれませんね(もちろん、負担になるようなら必要ありません)。

回復期編

次に、回復期でのオススメの過ごし方を紹介します。

急性期では徹底的にグータラすることをオススメしましたが、回復期からは意欲が回復し、少しずつ活動ができるようなってきます。
慎重に無理のない範囲で、いろいろなことにチャレンジしてみましょう。

やりたいことだけやる

私が回復期に入って久しぶりに意欲を感じられた時、「なんかやる気があるぞ!?」と驚くと共に、なんともいえない嬉しさを感じたことを覚えています。
なのでついついゲームをやったり、本を読んだりと、感情のおもむくままに色々やってしまいました(どれも10分程度で疲れてしまった上、最終的に寝込みました)。

回復期に入るとこのように、少しずつ「何かやりたい」という意欲が回復してきます。
このとき、私のようにいきなり色んなことをすると、アッという間に疲れて寝込むことになってしまいます。
様子を見ながら慎重に、少しずつ実行してみましょう。
何をするかは、その時にやりたいと思ったことにして、やりたくないことは避けてください
また疲れを感じたら、無理をせずにすぐ休むようにしてください。

生活リズムを整えてみる

ある程度の時間、やりたことができるようになったら、今度は生活リズムを整えることに挑戦してみると良いでしょう。

とはいっても、何でもかんでも正す必要はありません。
定期的に食事をして、定期的に寝る、だけでも十分です。
やれる範囲から、少しずつ無理のない程度にやってみましょう。

映画やドラマ・アニメなどを視聴する

映画やドラマ、アニメなどの視聴は、回復期の最初の時期にオススメです。
映画だと長いのでイッキ見は難しいですが、30分のドラマやアニメであれば、意外と最後まで見れてしまったりします(疲れますが)。

最近は安価な動画配信サービスがありますので、ネット環境さえあれば利用しやすいというのも良い点です(大体のサービスで無料のお試し期間が用意されています)。
テレビやスマホからも利用できるため、横になって見ることもできますし、何より見ている間は余計なことを考えずに済みます。

また多数の作品が配信されているため、その日の気分によって明るい作品を選んだり、敢えて暗い作品を選んでみたりなどもできるのも良い点です。

復職間近編

調子の揺れが少なくなったり、医師から復職を薦められるくらいにまで回復したら、いよいよ復職に向けて具体的な準備を始める時期です。

必要な準備は人それぞれでしょうが、ここでは共通して必要になると思われるものについてオススメしておきます。

適度な運動をしてみる

自宅から会社までの距離や移動手段にもよりますが、意外と体力を使うのが通勤です。
特に満員電車での長時間移動をともなう場合は、電車に乗っただけでグッタリしてしまうかもしれません。

このような通勤に耐えるためにも、適度な運動をして体力をつける必要があります
1ヶ月休職しただけでも、筋肉や体力は思いのほか急激に低下するので、まずは軽い運動から初めてみるのが良いでしょう。

私がオススメしたい運動は、ウォーキングです。
最初は20~30分程度からはじめて、徐々に歩く時間を増やしてみてください。
姿勢や歩く速度に気をつけていれば、結構体力がつきます。
道具いらずなのですぐ始められますし、気分転換にもなって意外とスッキリするというオマケまでついています。

出勤リハーサルなどをしてみる

ある程度体力がついたら、医師と相談をして出勤リハーサルをしてみることをオススメします。
実際に出勤するつもりで家を出て、会社近くまで移動してみるのです。
こうすることで実際の出勤と同じ体験ができるので、現状で復職となった場合、通勤できるのかを確認することができます。

通勤リハーサル以外にも、実際に会社近くのカフェや図書館などを利用して、働くリハーサルをしてみるのも良いでしょう。
例えばビジネス書などを持参して、14時まで読み続けられるか試してみる、といった具合です。

このようなリハーサルをすることで、問題点や課題を浮き彫りにさせることができます。
復職までにそれらの課題に対策をほどこすことができれば、復職の成功率が上がるでしょう。
逆に対策する時間が足りないのであれば、「復職はまだ早いのかも?」と考えることができます。

働き方について考える

仕事でうつ病になってしまった場合は、仕事や働き方に原因がある可能性があります。
もしそうであるならば、復職前に対策をしておかないと、復帰後しばらくして再発してしまうかもしれません。

うつ病になってしまう程の無理をして働いていた人は、まずは無理をせずに働けるようするべきですし、上司や同僚などの人間関係が原因である場合は、何とかして関係改善を試みるか、あるいは配置転換を求める必要があるでしょう。

このように休んでいる間に、原因をしっかりと見定めた上で、対策をどうするか考えておくことが復職の成功率を高めるコツです。

休職中にやらない方が良いこと

ここからは、休んでいる間はやらない方が良いことをいくつか紹介します。

なお、すでに説明した通り、基本的には「脳機能を回復する」という目的に反する行動は控えるべきです。
そのためストレスを感じる行動や、身体的な負荷が高すぎるような行為はなるべく避けましょう。

自分を否定しない

うつ病になると、嫌なことを思い出しては自己否定をしてしまう、ということが頻繁に起きますが、別にそうしたくてしている訳ではありません。
自分の意思とは無関係に、そういう思考が自動的に発生してしまっているのです。
このように勝手に生まれるネガティブな思考を、「否定的な自動思考」と呼びます。

自己否定することで精神は確実にダメージを受け、弱って行きます。
またそれだけでなく、否定的な自動思考を繰り返すことで、自分自身を否定的に捉える考え方が癖になってしまう可能性もあります(元から癖になってしまっている場合もあるでしょう)。
自己否定が癖になってしまうと、ちょっとした失敗をしただけで自責を繰り返すようになり、自分に自信が持てなくなってしまいます

この厄介な自動思考を止めるのは、残念ながら困難です。
従って、自動思考を止めるのではなく、自動思考による自己否定を否定する方が現実的だといえるでしょう。
それをするためにもまずは、「今のは自動思考による自己否定だ」と、気付くことが大切です。

病気によって勝手に行われている、根拠のない自己否定であることが自覚できれば、それだけでかなりダメージを軽減できます。

嫌なこと(やりたくないこと)はやらない

嫌なこと、やりたくないことをやると、ストレスを感じます。
少なくとも休職中は、嫌なことはなるべく避けた方が良いです。

うつ病である間は、ストレスに対する抵抗力が極端に低くなっていると考えるべきです。
健康体なら十分に耐えられるストレスだったとしても、病状を悪化させてしまうかもしれません。

焦って治そうと無理をしない

今までも繰り返し伝えていますが、絶対に焦りは禁物です。
しかし中には、「焦るな」と言われると、余計に焦ってしまう人がいると思います。
そんな場合は「焦っても大丈夫」と考えてみてください

人は禁止されると、余計に気になってしまうものです。
このような心理は、俗に「カリギュラ効果」と呼ばれています(心理学用語の「心理的リアクタンス」に該当します)。

例えば、昔話の「浦島太郎」。
浦島太郎はカリギュラ効果を発揮して、乙姫様から「絶対開けるな」と言われていた玉手箱を開けてしまいます。
同じく昔話の「鶴の恩返し」では、おじいさんがカリギュラ効果を発揮してしまい、娘が鶴の姿になって機織りしている場面を見てしまいます。

「焦るな」ではなく「焦ってもいいぞ」と許可することで、このようなカリギュラ効果を起こすことを避け、かえって安心して治療に専念できるようになります。
そもそもうつ病では、焦ってしまうのが宿命のようなものですので、このくらい適当にあしらうくらいの気持ちで十分なのです。

勝手に通院(服薬)をやめない

これも今まで何度か注意をしていますが、自分の勝手な判断で通院や服薬をやめてはいけません
なぜなら通院や服薬は「脳の機能障害」を回復させるために行っているからで、脳の治り具合は本人には判断しづらいからです。

自分で勝手に「治った!」と思っても、一時的に症状が良くなっただけかもしれません。
患部が目に見えて、自分で客観的に判断できるのなら良いのですが、脳みそを自分で見ることはできませんし、脳機能の回復具合の判断も難しいでしょう。

中途半端に治療をやめてしまうと、脳機能が中途半端な状態のまま復帰することになり、健康な人と同じように働くことを求められてしまいます。
そうなってしまって苦しむのは、他ならぬ自分です。
しっかりと治るまで、通院と服薬は続けるようにしましょう。

予定を立てない

復職直前ならまだしも、回復期は調子の波があり、その日にならないと動けるかどうかすらわからない、ということがあります。
そのような状態で行動予定を決めてしまうと、調子が悪いのにやらなければならない、といった状況になりかねません。

例えば、回復期に友人と会う約束をしてしまうと、なかなか厄介なことが起こり得ます。
仮に会う予定の日に調子が悪かった場合、無理して会っても会話を楽しむことができず、かえって相手に心配をかけてしまうかもしれません。
逆に不調だからと予定をキャンセルしてしまうと、「せっかく予定を空けておいたのにドタキャンなんて」と、相手が不愉快な思いをするかもしれません。
さらに深刻なのは、そうなってしまった責任を感じて、あなたが自分を責めてしまう可能性が高いことです。

従って調子の波がある間は、厳密な予定を立てることは避けて、「調子が良かったらやる」程度のゆるい予定に止めておくのが良いでしょう。
友人と会う場合は、あらかじめ事情を説明して、理解を求めておくと安心できます。

ネット(SNS)ばかりやらない

休職中は長い時間を寝て過ごすことになりかねない上、自動思考を止めるという理由から、ついついスマホをいじってしまう機会が多くなるかもしれません。
スマホで楽しい動画を見たり、リラックスできるような音楽を聴く分には構わないのですが、ネットやSNSばかりいじるのは、あまりオススメできません。

特にSNSは、多くの利用者によって多くの情報が集められている雑多な情報の集積所のような場所です。
ただでさえ自動思考によって負荷が掛かっている脳に対して、上乗せして大量の情報を処理させることは、控えめに見ても十分にリスキーです。

その上SNSには、ポジティブな意見とネガティブな意見が入り混じっています。
中には特定の性格の人を貶めるような意見や、うつ病に対するネガティブな意見があるかもしれません。
そういったものを目にしてしまうと、たとえ文章であってもダメージを受けてしまいます。

実はSNSに関しては、メンタルヘルスへの悪影響が危惧されています
利用時間を1日30分に制限しただけでメンタルヘルスが大きく向上したという、ペンシルベニア大学による研究結果があるほどです。

気晴らしに、たまに5分や10分だけ眺めたりするのは良いですが、どっぷりハマらないように気をつけてください。

「復職」は目的ではなく「結果」

私もそうだったのですが、休職の目的を「復職」としてしまうのは間違いです。
目的を「復職」にしてしまうと、病気を治すことよりも復職を優先して考えてしまいがちになります
しかしそれは、間違いなく本末転倒です。

休職する目的を理解するでも説明しましたが、休職する目的は「脳機能の回復」です。
復職は、脳機能を回復させることによって実現可能となる「結果」に過ぎません。
従って必要であるならば、「復職」を「転職」に変えても構わないのです。

「復職=完治」ではない

仮に「復職」という結果を達成することができたとしても、それがそのまま「完治」を意味するわけではないことに注意してください。

一般的に休職から復職した後も、通院服薬は継続されます
そのような状態を一定期間維持できたとき、いわゆる医療用語で「寛解(かんかい)」と呼ばれる状態になります。

「症状が一時的に軽くなったり,消えたりした状態です。このまま治る可能性もあります。場合によっては再発するかもしれません」

3.寛解(かんかい) - 「病院の言葉」を分かりやすくする提案(2019年09月01日閲覧)

つまり復職できたとしても、それは「症状が一時的に軽くなった」からに過ぎず、「場合によっては再発する」かもしれない状況だということです。

事実、2017年1月に発表された、厚生労働省研究班(代表者、横山和仁・順天堂大教授)の研究報告(研究8 病休と復職支援に関する調査と分析)によると、うつ病からの復職後5年以内に再度休職する確率は、47.1%であったとされています。
このことからも、うつ病から復職できたというだけでは「完治した」とはいえず、復職後も継続的なケアが必要だということが分かると思います。

「対象の 540 名は、復職後の累積再休務率は、復職日から 6 ヶ月で 19.3%、12 ヶ月(1 年)で 28.3%、24 ヶ月(2 年)で37.7%、5 年で 47.1%であった。もともと、メンタルヘルス不調は再発率が高く、それが高い再病休率『5 割』と関連があることが示唆される」

厚生労働省「労災疾病臨床研究事業費補助金 総括研究報告書 主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」P21(2019年09月01日閲覧)

うつ病は「あなたへの問いかけ」かもしれない

このような話をすると、「うつ病は治せないんじゃないか?」と思ってしまうかもしれません。
しかし時間はかかりますが、必ず治ります
治りますが、うつ病になる前と同じように働いたり、同じ価値観で同じ仕事ができるとは限りません。
むしろ、変化しないと完治しないかもしれません

うつ病になるには、さまざまな原因があると考えられていますが、ある程度以上の重いうつ病になった場合には、「認知行動療法」が有効だとされています。
認知行動療法とは、歪んでしまった考え方や捉え方(認知の歪み)を正して、楽に考えられるようにする精神療法の一種です。

うつ病になってしまうと、何でもかんでも悲観的に考えて、ネガティブに捉えてしまうようになります。
しかし客観的に見ると、その見方は大抵が極端で、時には言いがかりに近いことさえあります

例えば「自分なんて何も価値が無い人間だ」というように考えてしまう場合があります。
しかし人間誰しも特技があったり、人よりも深い知識を持つ分野があったり、特別な経験をしていたり(うつ病経験も、十分特別な経験といえます)など、見方を変えれば何らかの価値があるもので、無価値である方がかえって不自然です。
にも関わらず「自分は無価値だ」と決め付けて考えてしまうのは、「認知の歪み」による影響です。

このような歪みのある考え方を持っていると、ネガティブに物を考えたり捉えたりしてしまいやすくなり、精神に余計な負荷をかけてしまいます
その余計な負荷が、生活を送るうちに蓄積していくことで、より脳機能にダメージを与え、うつ病が発症しやすい状態になってしまいます
この循環を断ち切ることが、再発を防ぐ上で重要になってくるのです。

あなたがうつ病になった原因に、このような認知の歪みが影響してはいませんか?
もしかしたらあなたのうつ病は、「その考え方のまま生きていていいのか?」という、あなたに対する心からの問いかけなのかもしれません。

ーおしまいー

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