うつ病は、過度なストレスなどを原因に発症してしまう病気で、一般的に「心の病気」とされています。
そんなうつ病について、みなさんはどのくらい知っていますか?
働く上でストレスを受けやすい現代において、うつ病は誰もがなりえる病気です。
みなさんの周りでも、うつ病になった方がいるかもしれませんし、これからなってしまう方が出てくるかもしれません。
あるいは、あなた自身がうつ病になってしまう可能性も……。
(ちなみに私は、2回うつ病になりました)
万が一あなたが、あるいは同僚や友人、家族がうつ病になってしまったとき、一体どんな症状に襲われるのでしょうか?
そして発症してしまった場合は、どう対処すれば良いのでしょうか?
この記事では、そんな疑問に答えます。
うつ病ってどんな病気?
そもそも、うつ病ってどんな病気なんでしょう?
多くの人は「心の病気」だとか、「目が死んだようになる病気」とか、「引きこもりになる病気」だとか、なんとなくのイメージは持っているのではないかと思います。
それらは部分的にはその通りなのですが、必ずしも「目が死んだようになる」とも限りませんし、「引きこもりになる」とも限りません。
もっというと、一概に「心の病気」と言い切るのも難しい部分があるのです。
そこでまずは、うつ病の症状について(ときどき私の経験も交えて)紹介したいと思います。
ざっくりいうと「心と身体が不調になる病気」
「うつ病=心の病気」というイメージが強いと思いますが、上で書いた通り、一概に「心の病気」と言い切るのは難しいです。
なぜならば、その症状は「心の不調」だけではなく、「身体の不調」も伴うからです。
たとえば、よくみられる症状の中に「気分の落ち込み」や「睡眠障害」があります。
「気分の落ち込み」は心の症状ですが、「睡眠障害」は「眠れない」「夜中に目が覚めて眠れなくなる」「異常に早くに目覚めてしまう」といったもので、身体に関する症状です。
ではなぜうつ病は、心だけでなく身体にも不調をもたらすのでしょうか?
それはうつ病が、 過度なストレスなどを原因とする脳の機能障害によって引き起こされている病気だからです。
脳の動作に異常が発生することによって、心や身体の制御に問題が発生し、普通に活動することが難しくなってしまいます。
うつ病の治療に休職を伴う長期間の休養が必要なのは、このような脳機能の障害を、薬などによって回復させるのに時間がかかるためなのです。
うつ病の代表的な症状
では次に、脳の動作異常によってどんな症状が発生するのか、代表的なものをいくつか紹介します。
これから紹介する症状には「うつ病の発症サイン」とされているものもあります。
もし身近にこのような症状が見られる方がいた際には、ぜひ声をかけて、話を聞いてあげてください。
(うつ病の疑いがある場合の対処法については、こちらで紹介します)
なお、ここに挙げる症状すべてが現れるわけではなく、現れない場合もあることや、これら以外の症状が現れることもある点に注意してください。
憂うつな気分が続く
もっとも代表的な心の症状で、憂うつな気分が1日の大半を占めてしまいます。
その結果、表情は暗いままになり、感情の起伏がなくなったりします。
これは本人が望んで憂うつになっているのではなく、脳の神経伝達物質の分泌異常によって、勝手に憂うつになってしまっているのです。
そのため本人や周りの人の意思などでは、改善させることができません。
私がうつ病だったときは、それこそ眠っている以外の全ての時間が憂うつ(それにともなう不安と焦り、自責なども含む)で、症状が軽くなるにつれて憂うつな時間も減る、という感じでした。
何をやっても楽しめない・興味を持てない
強制的に憂うつ気分にされているため、以前は楽しめていた趣味などに対して興味を持つことができず、無理にやってみても全く楽しむことができません。
こちらも代表的な心の症状の1つです。
なかには「食事が趣味」という人もいるかと思いますが、残念ながら食事も例外ではありません(こちらで説明しています)。
不安や焦りを頻繁に感じて落ち着けない
憂うつな気分のままでいると、気持ちが落ち込みます。
そして気持ちが落ち込むと、物事を悪く考えてしまいがちになります。
たとえば「このまま病気が治らず、一生働けないのではないか」「同僚は仕事をしているのに、自分は休んでいて申し訳ない、なさけない」といったような、ネガティブな不安や焦りを引き起こしてしまいます。
自分を責め続けてしまう
こちらも憂うつな気分によって引き起こされます。
たとえば療養による休職をしている際に、「忙しいときに休んで、同僚に迷惑をかけてしまっている」「休むことで上司の期待を裏切ってしまった」などと考え、自分を「ダメな人間だ」「社会人失格だ」というように否定して、自責してしまいます。
ひどい時には、1日中休みなく自分を責めてしまうことも。
この絶え間ない自責によって不安や焦りが増してしまったり、不安や焦りの原因が自分だけにあると思い込んで、更に自責を繰り返してしまう、といったことも起きます。
無性に泣きたくなる
憂うつ気分によって落ち込み、焦りや不安から自責を繰り返すことによって、孤独を感じたり、孤立感が強くなったりします。
(絶望感や無力感、むなしさを感じることもあります)
それによって無性に泣きたくなることが、多々あります。
ちなみに私の場合、とてつもなく泣きたいと思っても、泣くことができませんでした(意図せず泣いてしまったことはあります)。
「泣く」という行為には大きなストレス発散効果があるため、泣きたい時に思い切り泣くとスッキリできます。
私が泣けなかったのは、今まで「泣いてはいけない」と思い込んで生きてきたからかもしれません。
死にたくなる
今まで紹介したような心の症状が積み重なると、「いっそ死んでしまったほうが楽だ」と考えるようになってしまいます。
そのような漠然とした「死にたい」という気持ちを、「希死念慮(きしねんりょ)」と呼びます。
今まで紹介した症状は早い段階でも見られるものでしたが、基本的に希死念慮は症状が進むことで、徐々に表れてきます。
なお人によっては「死にたい」ではなく、「消えてしまいたい」と考えることもあります。
私の場合は「死にたい」から「消えたい」に変化したパターンで、「死ぬと死体を処理したりしないといけないので、迷惑になってしまう」「死ぬのは痛いし怖い」といった理由から、やがて「スッと消滅してしまいたい」と願うようになりました。
眠れない
ここからは、身体に関する症状になります。
眠れないという症状は、うつ病における代表的な身体症状で、「睡眠障害」と呼ばれることもあります。
具体的には、以下のような症状を指します。
- 眠れない(入眠障害)
- 入眠はできるが夜中に目覚めてしまい、それから朝まで眠れない(中途覚醒)
- やたら早い時間に目覚めてしまい、二度寝もできない(早朝覚醒)
- いくら眠っても寝た感じがせず、昼間になってから強烈に眠くなる(熟眠障害)
- 異常に長時間眠ってしまう(過眠障害)
睡眠不足は、思考力や集中力、記憶力の低下や、メンタルの悪化などをはじめとする、さまざまな悪影響を及ぼします。
睡眠障害を抱えているうつ病の人には、真っ先に睡眠導入剤か、それに準じる薬が処方されます。
これは睡眠障害によって脳機能の回復が阻害されてしまうためです。
食欲がなくなる
うつ病になった場合、多くの人が食欲をなくしてしまいます。
また無理に食べてもおいしさを感じることができず、人によっては味覚が変わってしまったり、味覚がなくなってしまうこともあります。
なお、それとは逆に「食欲が増えて食べ過ぎてしまう」、というケースもあります。
私の場合も食欲は落ちましたが、幸い味覚が変わることは無く、食事量が若干減っただけでした。
身体がだるい
うつ病になると、常に身体のだるさが付きまとってきます。
また身体を重く感じて、朝起き上がることができなくなることや、ちょっと身体を動かしただけで疲れてしまう、といった症状も見られます。
ひどい時には座っているだけでも辛くなってしまうため、横になることが多くなり、身体を動かすことが減ってしまいます。
性欲が消える
うつ病になると、性欲が消え去ってしまうこともあります。
健康な大人なら間違いなく興奮するであろう場面に遭遇しても、全く興味を持つことができず、(精神的にも物理的にも) 反応できません。
そのため性行為を一切行わなくなります。
私の場合、行為そのものを忘れ去ってしまいました(症状が軽くなった段階になって、突然思い出しました)。
思考力や記憶力が目に見えて低下する
不安や焦りに押しつぶされて、考えたり集中したりすることが難しくなります。
そのためケアレスミスが多発し、物覚えも悪くなるため、仕事や生活に支障をきたすようになっていきます。
私の場合、同僚の話や文章の内容が理解できなくなったり、同じケアレスミスを短時間で何度も繰り返したり、数秒前の出来事すら記憶できなくなったりしました。
うつ病の種類
うつ病は主たる症状や、症状が悪化するきっかけ、対処法などによって細かく分類されています。
ここからはうつ病の種類について、いくつか代表的なものを紹介していきます。
うつ病性障害(単極性うつ病)
気分の落ち込みだけが見られる(異常なハイテンションにはならない)、いわゆる「うつ病」とされるものです。
より詳細な分類として、代表的なものを以下で説明します。
メランコリー型うつ病
一般的に「うつ病」と呼ばれているのは、この「メランコリー型」です。
主な症状は、異常な気分の落ち込み、喜びや楽しみ・興味の喪失、早朝覚醒、食欲の大幅な減退、感情の起伏がなくなる、過剰な自責、などになります。
このサイトで扱ううつ病は、このメランコリー型が中心になります。
非定型うつ病
「非定型」はメランコリー型に比べ、より「怠けている」と勘違いされやすいタイプのうつ病です。
最近では「新型うつ病」と呼ばれることが増えています。
具体的には、以下のような特徴が見られます。
- 嫌なことに対して極端に気分が落ち込む
- 好きなことや楽しいことに対しては気分が良くなり、アクティブに活動できる
- 自責せずに他人を責める
- 食欲が増えて過食傾向になる
- 過眠傾向がある
- 手足が異常に重く感じる
- 抗うつ薬が効かない
産後うつ病
「産後うつ病」は、うつ病を経験した女性に多く見られるとされています。
出産直後に発生する悲しさや不安、イライラ(マタニティーブルー)が2週間以上(長くて3ヶ月程度)続き、日常生活に支障をきたしたり、赤ちゃんに対して関心が持てなくなったりします。
季節性感情障害
特定の季節になると共にうつ病の症状が現れ、その季節が終わると症状が消えるタイプのうつ病で、「冬季うつ病」と呼ばれることもあります。
例えば典型的な「冬季うつ病」の場合、秋から冬にかけて症状が現れ、春になると自然に回復する、という流れが毎年繰り返されます。
双極性障害(双極性うつ病)
かつては「躁うつ病」と呼ばれることが多かった病気で、抑うつ状態(異常に無気力な状態)と躁状態(異常にハイテンションでアクティブな状態)を繰り返すのが主な症状です。
抑うつ状態のときはうつ病と同じ症状を見せますが、躁状態になると真逆になります。
異常なレベルで活発化し、異常な自信を持った上に行動も大胆になるため、眠らない、感情のおもむくまま行動する、浮気する、散財する、ギャンブルにお金をつぎ込む、といった問題行動が見られることもあります。
うつ病かも?そんな時にして欲しいこと
もしここまで紹介してきた症状などに心当たりがあったり、不安に感じるようなことがある場合は、もしかしたらうつ病か、その予兆である可能性があります。
ここからは、そんな予兆を感じたときのための対応方法を紹介します。
うつ病は早期対応が大切
どんな病気でも、症状が進む前のほうが対応しやすくなりますが、それはうつ病も同じです。
初期段階で対処できれば、1ヶ月程度休むだけで回復することもあります。
しかしひとたび悪化してしまうと、数ヶ月~数年単位の付き合いになってしまうこともあります。
脅かすわけではありませんが、私の場合は対処が遅れてしまい、最初の復職に至るまでに半年もの休職が必要になった上、「復職→再発→再休職」を繰り返してしまいました。
自己診断をしない
いくら早期対応が大事であっても、素人が勝手な憶測で「うつ病だ」「うつ病じゃない」と決めてしまうのは危険です。
最近はこの記事のように、インターネットでうつ病について詳しく調べることが可能になりました。
しかしそれだけで全てを決めるのではなく、必ず医療機関や公共の相談窓口などを利用した上で、判断をするようにしてください(信憑性の問題がありますので)。
相談窓口を利用する
市町村や保健所、精神保健福祉センターなどでは、うつ病に関する相談窓口が設けられています。
具体的にどこで診てもらえるのかわからない場合、こういった相談窓口などを利用して、受診可能な近くの医療機関を紹介してもらうという手段があります。
また公的な窓口以外にも、民間の団体による相談サービスも数多く展開されていますし、職場に産業医がいる場合はそちらで相談することも可能です。
利用しやすいと思えるサービスを利用してください。
医療機関を利用する
抵抗がなければ、いきなり医療機関で診てもらうのが良いでしょう。
うつ病については精神科、精神神経科、心療内科などで対応しています。
最近では「メンタルクリニック」という名前の病院もありますが、そういった医療機関でも受診が可能です。
「どこで受診できるのかイマイチよくわからない」という場合は、それっぽい医療機関に直接問い合わせる、医療機関のWebサイトを調べる、地域の相談窓口で聞く、などの手段で確認すると良いでしょう。
睡眠と休息をしっかり取る
受診した結果、治療が必要だった場合には医師の指示に従いましょう。
仮にうつ病ではなかったとしても、安心してはいけません。
疑わしい症状が出ている時点で、過剰な疲れやストレスがたまっている可能性が高いです。
睡眠と休息をしっかり取って、心身を健康な状態に戻すように心がけましょう。
家族やパートナーに理解してもらう
うつ病だった場合、症状によっては休職や、ある程度まとまった休みを取るように指示されることもあります。
そういった休みは、脳の機能を修復する上で必要不可欠なもので、安静に過ごすことが早く治ることにつながります。
そういった場合、家族やパートナーに病気や休みについて理解してもらうことは非常に重要です。
私の場合は家族の理解がなく、横になっているとサボっていると思われて怒鳴られるなど、安心して休むことができずに、一向に良くならないといったことがありました。
ですのでしっかりと説明をして、協力をお願いしてください。
もし症状が重く、説明が難しいと感じる場合などには、代わりに医師に説明してもらうのが良いでしょう。